東京地方裁判所 昭和46年(特わ)1616号 判決 1972年2月28日
本籍
群馬県前橋市大手町二丁目五七番地
住居
東京都大田区矢口二丁目二八番一一号
会社役員
渡辺節子
大正八年一〇月二二日生
右の者の頭書被告事件について、当裁判所は検察官宮本喜光出席のうえ審理をとげ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役六月および罰金五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
ただし、この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となる事実)
被告人は、自己の夫渡辺憲二の経営にかかる東京都大田区矢口二丁目二八番一一号所在渡辺外科医院ほか三医院における収入および資産の管理等経理事務全般を統括しているものであるが、右憲二の業務に関し同人の所得税を免れようと企て、診療収入の一部を除外し、架空名義または無記名の定期預金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ
第一、昭和四三年分の実際課税所得金額が二二、七五六、〇〇〇円あったのにかかわらず、昭和四四年三月一五日東京都大田区蒲田本町二丁目三〇番七号所在の所轄蒲田税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が八、六九〇、〇〇〇円でこれに対する所得税額が二、二五一、五〇〇円である旨の虚偽の右渡辺憲二名義の所得税確定申告書を提出し、もって同年分の正規の所得税額一〇、〇六五、一〇〇円と右申告税額との差額七、八一三、六〇〇円を免れ(別紙一、三)
第二、昭和四四年分の実際課税所得金額が三六、六六四、〇〇〇円あったのにかかわらず、昭和四五年三月一六日前記蒲田税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が一一、四五四、〇〇〇円でこれに対する所得税額が三、四一九、五〇〇円である旨の虚偽の前記同様名義の所得税確定申告書を提出し、もって同年分の正規の所得税額一八、四五一、四〇〇円と右申告税額との差額一五、〇三一、九〇〇円を免れ(別紙二、三)
たものである。
(証拠の標目)
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書
一、被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書(三通)
一、渡辺憲二の大蔵事務官に対する各質問てん末書(二通)
一、細川清茂の大蔵事務官に対する各質問てん末書(四通)
一、近藤八重子、亀岡鉄男、佐藤幸子、千代田貞子の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、昭和四三年分および昭和四四年分の各所得税確定申告書綴(昭和四六年押第一八二九号の一二、一三)
一、昭和四三年分および昭和四四年分の各所得税青色申告決算書綴(昭和四六年押第一八二九号の一四、一五)
以上のほかに
別紙一、二の1につき
一、大蔵事務官久世貴一作成の銀行調査書、窓口現金収入調査書集計表、窓口現金収入調査書、社会保険診療報酬調査書、各種保健診療収入銀行振込調査書
一、大蔵事務官熊谷実作成の社会保険等診療報酬調査書
別紙一、二の14につき
一、渡辺憲二の昭和四六年二月九日付上申書
一、蟹江直時、湊謙正、繁田正之、古関要八の各回答書
一、大蔵事務官久世貴一作成の減価償却費計算書
一、渡辺外科確認通知書一袋、請求書等綴(高島屋)一綴、什器備品一覧表等一袋(昭和四六年押第一八二九号の三、四、七)
別紙一、二の16につき
一、中塚正夫、前原義二の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、大蔵事務官川島貢作成の調査書
一、一般台帳二冊のうちの自43・6・17~至43・9・26とある一冊、入出金伝票一〇綴(昭和四六年押第一八二九号の五、六)
別紙一、二の17につき
一、渡辺憲二の昭和四六年四月五日付上申書
一、武藤三郎の証明書
一、柚木嘉平の各証明書(七通)
一、松本正の上申書
一、湯浅忠男、高屋守一、中村菊次の各証明書
一、大蔵事務官久世貴一作成の銀行調査書、借入金および支払利息調査書
別紙一、二の20につき
一、渡辺憲二の昭和四六年六月一六日付上申書
別紙一の24につき
一、所得税の確定申告書控等一袋(昭和四六年押第一八二九号の一一)
別紙一の28および二の25につき
一、室谷義の各証明書(二通)
別紙一の26および二の27、28、29につき
一、野崎英夫の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、渡辺憲二の昭和四六年四月五日付上申書
一、中村菊次の証明書
一、大蔵事務官久世貴一作成の銀行調査書
一、領収証一綴(昭和四六年押第一八二九号の二)のうち、福島健名義の金七万六九〇〇円の領収証および野崎英夫名義の金一四五二万四八〇〇円の領収証
一、工事台帳一冊(昭和四六年押第一八二九号の一〇)
一、領収証(二枚)一綴(昭和四六年押第一八二九号の一六)
一、土地売買契約書一袋(昭和四六年押第一八二九号の一七)
一、領収証一袋、契約書一袋、御見積書(昭和四六年押第一八二九号の一八、一九、二〇)
(法令の適用)
所得税法二三八条第一項、第二四四条第一項(情状により併科)。
刑法第四五条前段、第四七条本文、第四八条第二項(併合加重、懲役刑につき判示第二の罪の刑に加重)。
同法第一八条(換刑処分)。
同法第二五条第一項(執行猶予)。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 杉山忠雄)
別紙一
修正損益計算書
渡辺節子
自昭和43年1月1日
至昭和43年12月31日
<省略>
別紙二
修正損益計算書
渡辺節子
自昭和44年1月1日
至昭和44年12月31日
<省略>